木村チーム

コンデンシンによる間期クロマチン構造制御
 コンデンシンは、2つのSMC ATPaseサブユニットと3つのnon-SMCサブユニットから構成されるタンパク質複合体で、分裂期(M期)染色体凝縮を担う因子として同定されました。近年、高等真核生物には2つのタイプのコンデンシン(コンデンシンIとコンデンシンII)が存在することがしられています。木村等は、コンデンシンがATP依存的にDNAに正の超らせんを導入する活性を持つこと(Kimura & Hirano, Cell 1997; Kimura et al., Cell 1999)、この活性や染色体への局在が、種々のキナーゼやホスファターゼによってM期特異的に促進されることを見出してきました(Kimura et al. Science 1998; Takemoto et al. JBC 2004, EMBO J. 2006, Nat. Struct. & Mol. Biol. 2009)。超らせんの導入は、DNA構造をコンパクトにすることから、細胞内でのクロマチン構造変換に寄与していると考えられます。M期での役割の解析が進んでいるのに対し、間期におけるコンデンシンの役割はあまり明らかになっていません。しかし、遺伝子発現とクロマチン構造は密接に関わりあっていることはよく知られていることから、DNAへの超らせん導入活性を持つコンデンシンが、クロマチンの構造変換を介して、遺伝子発現をより高次のレベルで制御するというモデルは魅力的です。これまでの研究から、コンデンシンが間期において核小体に高濃度に局在することが明らかになっているので、核小体rDNA領域の制御機構に特に注目したいと考えています。

PP2Aによる細胞周期制御
 PP2Aは細胞内の総タンパク質の1%以上を占める、代表的なSer/Thrホスファターゼです。PP2Aは細胞周期の制御を含めて、ほとんど全ての細胞機能に関わっています。また、癌抑制タンパク質としても知られています。我々は、PP2AがM期特異的なコンデンシンⅡの染色体への結合に必須な役割を持つことを発見しました。興味深いことに、この過程において、PP2Aは従来から知られていた脱リン酸化酵素としてではなく、染色体へのリクルーターとして機能していました(Takemoto et al. Nat. Struct. & Mol. Biol. 2009)。さらに、PP2AはコンデンシンII以外にもKIF4aをはじめとするいくつかのタンパク質をリクルートすることがわかりました。一方で、M期の終了時にはPP2Aがコンデンシン等を脱リン酸化して染色体から解離させることがわかってきています。
 本研究から、PP2Aはタンパク質の脱リン酸化とタンパク質のリクルーターとしての二つのメカニズムによりM期を制御することが示唆されました。私たちは、M期をはじめとする細胞周期進行に対するPP2Aのこれら二つの働きについて、さらに詳細に解析する予定です。また、細胞周期は発癌と密接に結びついていることから、PP2Aがどのようなメカニズムで癌を抑制しているか、分子機構の解明に結びつくことが期待されます。
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